事務局だより 2014年01月15日(水)
 前回12月の講演会では、2011年の「アラブの春」の背景にあった、若年層の経済的困難や抑圧に抗議する国境を越えたアラブ・アイデンティティの広がりを、英仏によって創出されたばらばらなアラブ国家群の歴史を踏まえながら、エジプトを中心に明解かつ爽快に語っていただきました。
 2014年初回の講演会は、前回同様、シリーズ「21世紀歴史学の創造」全9巻の完結を記念し、執筆者のお一人である清水透氏から「〈いのち〉と歴史学」と題してお話を伺う予定です。 当日は「21世紀歴史学の創造」の割引販売も予定しています。どうぞ奮ってご参加ください。
 なお、清水先生の写真展「写真に見るラテンアメリカ研究史 清水透写真展 ~マヤの民との30年Part II」が、立教大学池袋キャンパス12号館2階リサーチコモンズで、1月10日から18日(日曜・祭日を除く10:00〜17:00)まで開催されます。お時間のある方は、ぜひ足をお運びください。
 2月の講演会は、「21世紀歴史学の創造」全9巻の刊行完結記念講演の最終回として、世界史研究所との共催により、11日(
火・祝)に共同執筆者の油井大三郎氏をお迎えし、「日本の原発導入と日米関係」というタイトルでご講演いただきます。詳細は追ってお知らせいたします。

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 昨年中は、本フォーラムへ温かいご支援を頂き心より御礼申し上げます。新年を迎え、皆さまのご雄健と益々のご活躍をお祈りいたしますと同時に、本年もご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
 年が改まっても、皆さまが大切にされているものが続きますように。

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去年今年貫く棒のごときもの(高浜虚子)

第106回講演会のお知らせ

 
「〈いのち〉と歴史学」 清水 透 氏 (慶應義塾大学名誉教授)

日付: 2014年01月19日(
時間: 15:00 - 17:00
 ↑ 通常例会と日時が異なりますので、ご注意ください。
場所: 渋谷アイビスビル10階 (エレベータで9階へ上がり階段でお越しください)
参加資料費: 500円(学生無料)


講演者プロフィール
清水 透(しみず とおる)
 ラテンアメリカ植民地時代の教会史研究から、フィールドワーク、聞き取りを基礎とする歴史研究に移行。1979年以来メキシコ南部チアパス州のマヤ系先住民社会の一家族の聞き取りを今もつづけている。問題意識は「近代」という時代を、その最底辺を生き抜いてきた人々の語りから逆照射すること。一方、1992年の娘の白血病発病を機に、骨髄バンクボランティアとして活動すると同時に、〈いのち〉への問題意識を強め、先端医療にまつわる<いのち>の素材化について問題を提起してきた。主要著作:『コーラを聖なる水に変えた人々』(現代企画室、1984年)、『エル・チチョンの怒り』(東京大学出版会、1988年)、「コロンブスと近代」(1995年、『世界史とは何か』東京大学出版会所収)、「砂漠を越えたマヤの民」(2013年、シリーズ「21世紀歴史学の創造」第6巻所収)、「現代医療と他者の命の物象化」(2002年、『三田学会雑誌』94巻4号所収)、「家族と記憶」(2001年、慶應義塾大学経済学部編『家族へのまなざし』弘文堂所収)、「〈いのち〉の知」(2013年、シリーズ「21世紀歴史学の創造」別巻Ⅱ所収)など。


講演要旨
 
近代科学技術の発展は、私たちの日常生活の効率化と利便性の向上に大いに寄与してきた。しかしその発展の背景には、大量殺戮の技術開発の問題や、現場労働者たちの〈いのち〉の物象化といった深刻な問題がある。救命を目的としてきたはずの現代医療にも、同様な問題がつきまとう。「夢の治療法」の裏に、他者の〈いのち〉の素材化という問題はないのか?しかし私たちは、目先の「発展」に目を奪われ、その背景にある深刻な問題について「知らされない」「知らないことにする」ことに慣れてしまったといえる。
 ウラン鉱山の労働者たち、原発の下請け労働者たち、臓器の密売の犠牲となりつづけているストリート・チルドレン。こうした最果ての〈南〉の〈いのち〉の問題に焦点を当ててみると、歴史学を再構築する新たな道も開かれるように思う。


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